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こんにちは、葉明です。
 
 滅多に書かない景時…。
 つまりリクも少ない景時ですが、定期的に書いているのは大阪イベントの売り子嬢の存在が一つ。
 朔の兄上であることが一つ(ひどい)

 ですが、書き易いんですよね~
 多分テーマをアレコレ盛り込めるからです。
 今回は政子の嫉妬から、弁慶の暗躍、九郎との関係などてんこもりっ


 ヒノエ編の感想的にあっつんEND読みたいと言われましたが、景時編ではうっかり弁慶の調教シーン書きかけましたよ。
 これは!景時本!!

 とりあえず特典本はともかく、本編は葉明も超絶好き勝手にはいたしておりません。



 うんでもまあ好き勝手にしますけど。

 くのいち望美は、そもそも現代から召喚された少女じゃないので、望美じゃないような言葉遣いもできるとか、いろいろあるんですが、「こんなの望美じゃない!」とは言われないように心がけてはおります。

 いろんな環境下で望美が望美らしくあるとはどんなのかなって思いつつなのですが、今のところ、ヒノエ編の望美が一番望美らしいです。
 ヒノエの意地悪によくぷんすかしていますw


 さて、げんこー、げんこー。

 本日も拍手・ご来訪、誠にありがとうございました!
 葉明も気をつけていますが、暑いので皆様本当にお気をつけください。

 ここ暫くの暑さは 「災害レベル」 です!!

 私に言われるのは何かと思いますが、無理なさらないでね!!

 では、景時編をお楽しみください。




拍手[4回]







「九郎を西に派遣しようと思う」
「まあ、九郎殿をですか?」

 鎌倉である。
 源氏と平家、勢いであればこの二者が大きいが、鎌倉の源氏は現在のところ主流ではなかった。
 現在、源氏の一番手は木曽義仲である。
 が、彼の振る舞いが非常に横暴であることと、もともと平清盛と並んで源氏の筆頭にいたのが男の父である源義朝であったため、男は貴族たちに内々に上京を打診されていたのである。
 そこから前記の台詞に繋がるのだ。

「ふふふ、それは成果が楽しみですことね。でも、九郎殿だけで大丈夫なんですの?」

 男の妻が小首を傾げる。
 彼女から見れば、九郎は青二才で戦上手ではあるのかもしれないが、それだけの男である。
 彼自身が出向くことはできないにしても、もう少し腹芸のできる者を連れて行かないと、海千山千の貴族達にいいようにあしらわれ、丸め込まれるのでは、と思ってしまう。

(九郎一人なら、いくらでもそうなってもかまわないけれど…)

 甘く毒のある微笑みを浮かべた女は、徹頭徹尾、自分と夫のことしか考えてはいなかった。
 他の者は有象無象、よくて駒でしかない。
 そんな女にとっては、夫の窮地に駆けつけた母親違いの弟などどうでもいい存在だ。
 だが、失敗されては困る。
 九郎の失敗は夫の失敗になるからだ。
 妻の懸念に、男は―――頼朝は鬱蒼と微笑んだ。

「うむ、だから景時とあれをつけることにした」
「まあ―――」

 女は目を見開く。頼朝は静かにその名を呼んだ。

「望美」
「お呼びでしょうか」

 静かに音もなく少女は現れた―――女、政子は表面上は何でもない風に保ちながら、ぎり、と手の中の扇をきしませる。

「お前に頼みたいことがある」
「仰せのままに」
「うむ」

 短い淡々とした遣り取り。二人の世界。
 妻である自分が別格なのは分かっている―――けれど、夫と少女の間には、他の者には感じられない絆めいたものを感じるのだった。
 たとえば、同じく九郎につけるという景時。
 この男も他では頼朝の腹心といわれているし、頼朝の危機を救った実績もあるというのに、頼朝との関係は冷え切っていることを政子は知っている。
 が、この少女は違う。違うと思ってしまう―――それが自分の勘違いでないことは、他ならぬ景時に相対する頼朝を知っているからだった。

(ただのくのいちのくせに…)

 男と女の関係ではない、ということは知っている。
 だが、だとしたらこの二人の間に感じるものは何なのか―――政子はいつも腹立たしい。それを表に表さないのは夫に嫌われたくないからだ。
 ゆえに政子は冷静を保ち、二人の間で交わされる会話――一方的な命令を聞き届ける。
 最後のとき、望美は僅かに抵抗でも感じたのか、表情を曇らせた。

「……承知いたしました」

 頼朝の方はそれにかまいもしなかった。

「では、明朝発て」
「は、―――御免」

 飛び立つ所為か、現れたときよりは音を残して、望美が消える。幻のように。
 けれども、まだそこにあの薄墨の装束がじっと佇んでいるような気がして、政子は不快な眼差しを向け続けた。
 美しいことは認める。心根も、きっと悪くないのだろう。
 だが、それで一体何ができる?

「……よろしいんですの?」
「何がだ」
「あの子……望美のことですわ。九郎などにつけて、よもや九郎殿があの子に懸想などしたら」

 適当に言った言葉だったが、それはいいことのような気がした。
 少なくとも、夫の側からあの少女は排除できよう。
 今のように、小さく名前を呼ぶだけで現れられる位置にあのくのいちが控えていることも、それを夫が許していることも、政子は不快だったから。
 ―――そんな存在は他にはいない。
 今だってこの部屋には自分たち以外、誰もいない。
 幼いときに辛酸を舐めた頼朝は基本的に誰も信じないから、常に人払いがされているのだ。
 なのに、あの少女はいつもそばにいる…。

(でも、さすがに恋人が…夫ができれば、今のままとはいきませんわね)

 想像で少し上機嫌になって、政子は頼朝にしなだれかかった。

「ねえ、どうなさいます、あなた?そうなったら…。九郎殿ならあの子を任せてもいいのではなくて?ああ、でも…」

 政子は更にうっとりと笑った。

「京へは景時も同行させるのでしたわね。景時もあの子に懸想してしまうかもしれないわ。そうなったら――うふふ…、あの子はどちらを選ぶのかしら?」

 あの少女を巡り、景時と九郎が仲違いをする。
 それはなかなかに見もので楽しそうだった。
 あの怯えた男と堅物が恋をする顔も、仲違いも、両方見たい。政子は心からそう思ったのだが、生憎夫は興味を惹かれなかったようである。

「ありえぬな」
「まあ、どうして?」
「理由は言わぬ。だが、ありえぬ」
「………」

 夫の理由を明かさない断言に政子は黙り込んだ。想像で舞い上がった心が急速に冷えてゆく。
 離れた妻に構わず、頼朝が今度は声を張り上げる。

「誰かおらぬか!」

 少し置いて、離れたところから必死さの滲む足音が響いてきた。

「は、ははっ、お、お呼びでしょうか」

 息を切らして現れた郎党をねぎらいもせず、頼朝は短く命じた。

「景時を呼べ」
「はっ…」

 再び郎党が慌てて駆け去っていく。
 景時が二人の前に参上したのは半刻後。
 ……かのくのいちと同じように最後の部分で顔を顰めながら、景時も大人しく諾の返事を返した。







「ただいま~」

 その日、疲れきった顔で景時は帰宅した。
 ……あの夫婦と会うと、いつもどっと疲れるのである。
 ぱたぱたと軽い足音と共に顔を出したのは、女房ではなく妹の朔である。

「はい、おかえりなさい……って、その顔!どうなさったの?また失敗でもなさったのですか?」
「ひ、ひどいよ、朔~」

 第一声がこれなのだから、日頃の景時の信頼度がわかるというものである。
 何とか挽回したいが、生憎とんと機会がない。

「そうじゃなくて……その、上京することになったからさ、九郎と一緒に」
「えっ」
「頼朝様の上洛前の下準備だね~」
「まあ…」

 景時はなるべく軽く言ったのだが、朔は表情を曇らせた。いろいろと噂を聞いているのかもしれない。
 ゆったりとした足取りで、奥から母も出てきた。

「おかえりなさい、景時。……長くなりそうなのですか?」
「ただいま帰りました、母上。……ええ、まあ」

 景時は苦笑交じりに頭を掻いた。いずれ、わかることだ。

「……朝日将軍が陥落したようですので」

 朔は絶句して口元を押さえたが、母はさすがにそこまで動じはしなかった。

「そうですか…それで上洛に」
「ええ、まずは俺たちだけですけどね」

 京の貴族たちの思惑とは逆に、頼朝は最終的には京に落ち着くことはないだろう―――と、景時は見ている。
 だからこその九郎の派遣であり、その補佐に自分と……彼女が選ばれたのだろう、と。

「……兄上?」
「ん、んん、何かな?」
「……何か今、いやらしい顔をなさっていたわ。頼朝様のお話はそれだけだったのですか?」

 鋭い。
 もしくは、自分がバレバレなだけだろうか。
 景時はこっそり首を竦めた。妹が生まれてこの方、景時は勝てた覚えがない。

「あーうーん、いや、い、一緒に行くのがさ、九郎だけじゃないから、ね」

 隠し切れない、けれどもあっさり白状できない。
 兄の葛藤をあっさり朔は看破した。

「―――望美も行くのですね?」
「えっ、う、うん…」

 何で分かってしまったのだろう。景時は背にだらだらと汗を流した。
 朔がキッパリと言う。

「私も行きます」
「えっ」
「何か文句でも?」
「あ、ありません…」

 梶原兄妹の力関係は昔からはっきりしている。
 かくして、鎌倉の邸に母ひとり残しての旅立ちが決定されたのだった。





 景時を書くときに、朔もお願いしますと毎回言われます。
 私も大好きなので、登場させました(笑)

 朔は兄も望美も好きなので、こっそり景時の恋の応援もします。
 でも「兄上は頼りないわ!」と思っていて「望美可愛い」の人なので、九郎にも平気で塩を送ります。
 ちなみに、何故そんなことをするのかというと、九郎の方が望美にふさわしいというより、
 「兄上がもっとしっかりなさったらいいんだわ!」
 と、思っての行動ですが、兄上は「トホホ…」としょんぼりするだけなので、あんまり激励になっておりません。
 朔も「トホホ」と思っているかもしれません。

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