更新日記
こんにちは。
夏コミ1日目ですね^^
行かれた方はお疲れ様でした!
桜宵の本を手に取っていただけた方は、本当にありがとうございます^^
今日は、本当は、原稿があがっている予定でした。予定。けふ。
なので飲み会です。
すっきり大騒ぎ―!とはいかないのがつらいところですが。
前々からの約束ですのだ。
あ、前から知盛編の抜粋はどうしたというお声が来てますので、下に抜いておきます^^
通販ももう少ししたら開始したいところ・・・
今日は知盛と将臣にかかっておりました。
将臣・・・・・
君はいけない人だ・・・・・・!!(那由多談)
本日も拍手・ご来訪、誠にありがとうございました^^
ちょうどその頃、ある人物が京に到着していた。
熊野別当・藤原湛増である。
通称をヒノエ。
六波羅に作っていたアジトが使えなくなったヒノエは、京の様子を見がてら、新しいアジトの場所を探しにきていたのだ。
もちろん、平家の様子―――とりわけ、桜姫のご機嫌伺いに行こうともしているのだが。
まだ、どこにも自身が京に来たことは知らせず、ヒノエは馬を引きながら、適当に歩いていた。
そこに向かったのは偶然である。
「……桜姫……?」
妖艶の舞。
この京の水がめであり、神威の場所であるそこで、一人の舞姫が待っていた。
桜がまるで慕うようにそのひとのまわりを彩る。
扇に描かれた意匠は沙羅双樹。
まるで町娘ほども軽装でありながら、滲む気品は隠しようがない。
唇に少しだけさされた紅が艶めかしく、ヒノエは思わず立ち尽くした。
水を飲みたい馬がヒノエを引っ張って、一鳴きする。
それによって、幻想の世界は断たれた。
望美もまた、人がいるのに気づき、しかもそれが旧知の少年であることに驚いた。
「ヒノエくんっ……?」
「……やあ、桜姫」
ヒノエは何とか普通の声を出した。
心の臓がやけに大きく耳を打つ。
今まで黙っていたかのように、急にその音が耳に届くようになった。
それと同時にあふれだすもの。
強烈な憧れ。
物凄い吸引力。
それらを何とか、このときのヒノエは抑え込んだ。
望美の目には、僅かに涙が光っている。
「こんなところで、舞の練習かい?」
「あ、ううん……そんなんじゃないんだけど……」
望美は曖昧に首を振り、健気に笑顔を作ってみせた。
「京にいたんだね、ヒノエくん。知らなかった」
「着いたのはさっきだよ。一番初めに見た顔がお前なんて、オレはついてるね」
「ふふ、ヒノエくんってば……」
望美はおかしそうに笑う。
しかし、どうにも仕草は弱々しかった。
たまらないくらい。
―――前に涙を見たときは、ヒノエは、何故望美が泣いているのかを知らなかった。
だが、今回は見当がつく。
(知盛の奴……っ)
ここに弁慶がいれば、「彼のせいではないのですから」くらい、言ったかもしれない。
事実、ヒノエだってそう思う。
しかし、それでもどうしたって波立つのだ。
心が。
ざわついて、止まらない。
「………ヒノエくん…」
ヒノエは黙ったまま、望美の涙を指先で掬った。
黙ったまま、ヒノエは無表情だ。
その心の中はうかがえない。
「これは、目にゴミが……」
「知盛のことだろ?」
望美が釈明しようとしたとき、ヒノエが端的にそれを遮った。
望美は一瞬詰まる。そして、少しだけ笑った。
「……ヒノエくんも知ってたんだね」
「京の情報でも、今一番、大きいものだからね」
正直、ヒノエは知盛が受けるとは思わなかったのだ。
源氏の大姫を政略結婚で迎える以上、正室として迎えないわけにはいくまい。
あるいは、知盛が婿として東国に下るのならば、やはり桜姫をともに連れて行くことはできないだろう。
どちらにせよ、受けるとは思わなかった。
だが、逆に、避けることもできないだろうと思っていた。和議の直後に、その相手との縁組を断れるはずがない。
これは、政治なのだ。
また、それを分からない桜姫ではないと、ヒノエは思っている。
やはり、望美は軽く笑った。
「……まあ、そうだよね。あの人意外に、有能だもの」
「ああ」
「縁談、これ以外も、きっといっぱいあったよね……」
「たぶんね」
声に気負いはない。
悲壮感も。
どこか諦めてしまったように、望美は話す。
だが、じっとしてはいられないのだろう。
舞でも舞うかのような足取りで、その場でゆらり、扇を閃かせる。
「桜姫……知盛が、許せない?」
望美は静かに首を振った。
これが知盛の望んだことではないことも、知盛が抵抗してくれただろうことも、全部分かるからだ。
許す許さないの問題ではない。
面倒くさがりのあの人が、全部放り出してないというだけで、むしろ褒めるべきではあるまいか。
そう思う。
本当に、そう思うのに。
「……桜姫っ……」
無表情に舞う望美の頬に、涙が一筋だけ伝った。
(―――あなたから聞きたかったよ)
知盛は絶対そうしない。
分かっているのに、心が張り裂けそうに痛かった。
傍にいたい。
共にいたい。
知盛は望美を失いたくないと言ってくれたけれど、それは望美もまた同じだった。
二度と離れたくないと、あの時に誓ったはずだったけど。
ヒノエに抱き締められても、望美は抵抗しなかった。
―――抵抗するだけの気力がもうなかったのかもしれない。
知盛編です(にっこり)
あッ、石は投げないで!(笑)
平和になりました世の中ですが、何かと大変です。
領土とか、位とか、結婚とか。
物語は終わってメデタシメデタシではないのです・・・
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